2017年11月8日水曜日

再会




>お邪魔します。

 そう言って玄関へ。すると、そこには私らの来訪を既に察知した響号が待っていた。そして、あの大きい目で私を見つめた。

 「間違いない」と確信した彼は、土間に下りて妻と息子の匂いを嗅いだ。そして、急いで戻って私の顔をペロペロリ。部屋に上がると、妻と息子にもペロリの嵐。

>覚えていたんですね。

と、ユーザさんが言った。響号は、私らに対する一通りの挨拶を済ますと、ユーザさんの膝の上で目を閉じた。

>響号は、どこで寝ているんですか?

>響は、昼はそこのフナプラで休んでいます。
>夜は、寝室です。

>見させてもらっていいですか?

>どうぞ。

 そこで、寝室を拝見させてもらったが、そこにはハウスもケージもなかった。

>アハハ、そのベッドで一緒に寝ているんですよ。
>ですから、響が寝言を言ったり夢を見ているのがよーく分かります。

 ユーザさんによれば、

1、響号は、目的地への道筋を一度で覚えます。
2、2、3cmの段差でも止まって教えてくれます。
3、障害物があれば、車が来ないのを確認してから避けて進みます。
4、拾い食いなども全くしません。

と、最高の相棒最高の盲導犬とのこと。

1、毎月、必ず、動物病院で健康診断を受けさせています。
2、月に一度はシャンプーをしてやっています。
3、歯磨きは毎日です。
4、お出かけの後は、必ず、オレンジXで足と体を拭いています。

 響号とユーザさんの日常は、私らの想像とはかなり違っていた。

>多分、響号は、ケージで待機しているんだろう。
>夜は、ケージで寝ているに違いない。

 そんな風に思っていた。私らは、そういう生活を予想して響号にそんな一年を過ごさせた。が、響号の日々は、完全に想定外だった。

 話が一段落したところで、私らは遠慮がちに響号をハグハグさせてもらった。すると

>僕、実はこの時を待ってたよ!

とばかりに、響号は部屋を飛び回り始めた。隣の寝室にダッシュしてベッドに駆け上ってUターンしては私らの元に戻っては顔をペロペロペロリを繰り返した。

>すみません。興奮させてしまって・・・

>いや、構いませんよ。
>私は、雨の日にはボール遊びをしてやります。
>すると、響は(今のように)飛び回ります。
>それでも、ちゃんとお仕事はします。
>大丈夫です。

 なお、響号は、私らがユーザさん宅を後にした時、寝室のベッドに上って窓からしばらく見送っていたという。

>帰られた後、響が何時もの場所にいないんですよ。
>探したら、寝室のベッドに上がって窓から外を見ていました。
>皆さんを見送っていたんですねー。

 そのことを聞いた私らは、「ウン、やっぱし、響号がリタイアしたら迎えにいこう!絶対にいかねば・・・」と思った。

 盲導犬になった響号との再会。それは、私らに《盲導犬とユーザさんの実際の暮らしの一旦》を垣間見させた。本記事では割愛したが、そこには互いに命を懸けた挑戦の連続、互いに対する信頼あっての挑戦の日々という側面もあった。今日、響号は、警察の依頼で《盲導犬とユーザさんを輪禍から守るための点字ブロックの敷設状況確認テスト》に終日奮闘したという。

 盲導犬響とユーザさんの安全と健康とを祈って結ぶとする。


PS、ユーザさんと犬との関係


 少し、ユーザさんと犬との関係を補足しておく。

>失明するまでは柴犬などと暮らしていました。
>警察犬訓練所の依頼でジャーマン・シェパードを2頭預かったこともあります。

 《響号の今の暮らしの背景には、ユーザさんと犬との歴史がある》のかもしれない。



Xanti 特集号

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